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[milumo(みるも)コラム メガネのバカヤロー] [COLUMN Vol.06] 伊達さんについて考える。

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黒渕トオル
「生涯、黒縁メガネ。」と決めこむ、兼業フリーライター。
眼鏡業界を、独自の視点で書き綴る。

黒渕トオル

たいしてメガネについての知識がある訳でもないのに、好き勝手書いているド素人の私ではあるが、コレに関してはけっこう自信がある。街中でコレを見分けるのに、そこまで時間はかからない。すれちがいざま、瞬時に判断(勝手に)できる場合もあるのだ。

あっ!あの人、伊達メガネ。

 “伊達メガネ”というのは、視力の補正を行うレンズを使用しない、ファッション感覚でかけるメガネの事である。なんで“伊達”なのかは諸説あるようだが、我々メガネ戦士にとっては、この“伊達さん”が何とも不可思議な存在なのである。
 メガネを掛けていて、「かっこいい」とか「羨ましい」とか言われた事は一度も無い。せいぜい、「似合うね」や「知的に見えるかも~」である。そこはやはり、視力が悪いから、やむ終えずメガネをかけている感覚があるからではないだろうか。

そんなメガネを、なんでわざわざ掛けたいと思うのか・・。
何とも理解しづらい・・。

 伊達さんは、やはり我々メガネ戦士にとっては“にわか”である。先程の話であるが、伊達さんを見分けるのには、一つのポイントがあった。

レンズが妙に光っている。

 補正レンズとの大きな違いは、おそらく表面の加工だ。反射を防ぐコーティングの事をおそらく伊達さんは知らないのであろう。一見、憧れのメガネワールドに足を踏み入れたかに思える伊達さんも、我々の様に、様々な生活上の困難を愛するレンズと共に乗り越えてきたメガネ戦士から見れば、“可愛さ”さえ感じる、にわかっぷりなのだ。

 しかしながら、メガネ人口を増やしメガネ業界を潤すであろう、この“伊達ちゃん”を、温かく迎える事は重要である。メガネの需要が増えれば、品質も向上し、種類も増え、良質なメガネフレームが我々のような一般市民でも手の届く価格で購入できるようになっていく可能性もあるからだ。

 そこで、可愛い伊達ちゃんの良い所を考えてみる事にした。
 実は先程の“伊達ポイント”、レンズの他にもう一つある。

伊達ちゃんは、妙にオシャレ。

 本音を言うと、こっちの方がポイントだったりして。
街中で目にする伊達ちゃんは、たいていオシャレなのだ。そして悲しい事に、何年もメガネを掛けている私よりも、よっぽどメガネを掛けこなしている。考えてみれば、伊達メガネはオシャレグッズなのだから、伊達ちゃんがオシャレなのは当然と言えば当然かもしれない。

他にも伊達ちゃんの良い所を考えてみた・・・

 ・断然安い。(レンズやフレームが安価。)
 ・掛けたい時だけ掛けられる。(無しでも見えるから。)
 ・奇抜なデザインを買う勇気が出やすい。(安いから失敗しても気にしない。)
 ・ぶっちゃけ、レンズ無くても良い。

やるじゃん、伊達~!!!

 ここまで来て、私の中でひとつの結論が出た。我々メガネ戦士にとって、伊達ちゃんは言わば“親戚”みたいなもので、容姿はそっくりでも、生まれも育ちも、するべき仕事も性格も違う。適度な関係性を持って、これからも仲良く共存して行けるような、頼もしい存在と言えるだろう。

 さて、ご存知の通り「メガネ戦士」とは、自身が持つ視力の欠点と、愛するメガネと共に戦い続ける勇者の事だが、そこには“コンタクトレンズ”という永遠のライバルが存在する。メガネ愛を忘れ、亡命した戦友も数多くいる事であろう。コンタクトの魅力を考えれば、むやみに責める事は出来ないが、そんなかつての同志の悲しい現実を、この度耳にしてしまった・・。

 メガネをかけていて思う事。
 「今すぐ全力で走りたい。」
 「おもいきり、NO~!!と首を横に振りたい。」
 「おもいきり、YES~!!と首を縦に振りたい。」
 「横向きでうたた寝したい。」

 そんな願望を、かつての同志はコンタクトにする事で達成したのだろう。そして、完全にメガネ愛を忘れ、フレームの無い世界を満喫していたのだ。そこに、最近また世間で増え始めた“伊達ちゃん”の存在を知り、「懐かしいなぁ・・。」とか言いながら、軽い気持ちで伊達ちゃんの仲間入り。

 つまり、コンタクトのくせに伊達ちゃん・・
 はい。バカ誕生。
 これは救いようが無い。

サングラスならまだしも、よりによって、かつての自分がやむを得ず掛けていたメガネを、再び掛けてしまうとは・・。

さんざん揉めて離婚したのに、前の奥さんとそっくりな人と再婚した様なものである。
中途半端なメガネ愛は、この様な悲劇を招き兼ねないという事を、我々メガネ戦士も肝に命じておかなければならない。

あれ?待てよ・・。

 サングラスって、どうなんだろう・・。

 補正無しのものが断然多いし、私も持っている・・。

 考え方によっては、“伊達ちゃん”だ・・。

 知らず知らず、私も伊達ちゃんになっていたというのであろうか。サングラスも色眼鏡も、鼻とヒゲが付いたおもしろメガネも、伊達ちゃんの定義に当てはまるとしたら、これは大問題。伊達ちゃんはずっと昔から、我々の生活に溶け込んでいた事になる・・。

伊達ちゃん恐るべし。


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