脳科学技術を活かしレンズを設計

日本ばかりでなく、世界においても広く知られる眼鏡レンズ専門メーカー「東海光学」。お客様に優しく快適な視界を提供するために、業界に先駆けて多くの最新レンズを開発している。脳科学を取り入れてストレスを減らした「脳科学メガネレンズ」もその一つだ。プロジェクトの立ち上げ以来、新たな技術開発を推進してきた同社開発本部の鈴木雅也氏に開発の背景や意図、イノベーションの変遷、今後の方向性を聞いた。

アイメトリクス誕生の由来とは?

「真の装用感、究極の快適性を実現したかった」と語る鈴木氏。

長年にわたり遠近両用メガネレンズの開発では、モニターによる主観評価がメインであった。ただ、どうしてもモニター本人の個人的な好みに左右されやすく、どこがどのくらい良くなったのか微妙な違いを検出しにくかったのも事実。設計技術が高度化している昨今、各レンズメーカーとも新たな手法を捜し求めていたといえる。そうした中、東海光学では脳科学を駆使し感性を定量化し、得られた評価データをレンズの設計・開発プロセスに反映させるという画期的なプロジェクトに着手していた。いわゆる、「脳科学メガネレンズ」の開発プロジェクトである。

「もともとは装用感の良いレンズを作りたいという発想からスタートしました」と語るのは、東海光学開発本部の鈴木雅也氏。このプロジェクトのキーマンといえる人物だ。「当時は装用感よりもレンズの薄さや軽さがクローズアップされていました。しかし、私たちの方向性は違っていました。やはり、レンズの快適性を追求すべきだと考えたのです。問題はどのように実現していくかということ。特にポイントとなったのは、定義が難しい"装用感"をどのように測定するかという部分です。試行錯誤の末に辿り着いた結果が脳科学というアプローチでした」

さらに、鈴木氏はプロジェクトにおけるもう一つの軸となる想いも語ってくれた。「私たちが目指したのは、"誰でも安心して使える遠近両用レンズを作ること"です。一部の声ではあったものの『自分には遠近両用レンズはどうしても掛けられない』『無理だ』というお客様がいらしたので、何とかしたいと常々思っていました。脳科学を活用し、どんな人でも快適に掛けられる究極の遠近両用レンズを作りたい!という想いを叶えたかったのです」

試行錯誤の末に、辿り着いた真の装用感

人間の感性に関わる3つの脳波の変化から、感情の動きを分析していく実験を幾度となく行なった。

進取の気性にあふれる東海光学だけに経営陣も含めて脳科学メガネレンズに会社全体がバックアップした。とはいえ、「業界でも初めての取り組みゆえ、試行錯誤の連続であった」と鈴木氏は語る。

「始めは上手く行くかも分かりませんでした。とにかく、トライ&エラーの連続です。試作品も通常の数倍以上。少し進めては改良する。ものすごく手間暇をかけました」。鈴木氏らが採った開発のスタンスは、見えにくい部分や気になる部分を無くすのではなく気にならなくすること。通常は、レンズの見やすい部分を拡大するという発想が主流だが、全く違う方向性で開発を進めたことになる。

開発はNTTデータ経営研究所と共同で実施。最先端の脳波計測手法を取り入れ、2008年10月遂に脳科学メガネレンズ第一号となる「ベルーナ レゾナス」が誕生した。レンズ端部分のボヤケが少ないワイドな視野、ゆれ・ゆがみを抑えたマイルドな視界。それによって、未だかつてなかったような装用感を生み出すことができたのだ。

「何が嬉しかったかといえば、お客様からの反響の大きさです。それまでは、『メガネは掛けられて当たり前』『多少違和感があっても慣れるまで我慢するか、諦めるしかない』という方が多かったせいか、新製品を出してもお客様からの直接の声があまりなかったのです。ベルーナ レゾナスのときは全く違いました。『日々の生活が楽しくなってきた』という多くの声がお客様相談室に寄せられるようになりました。挑戦のしがいがありましたね」と鈴木氏は振り返る。

〈次ページへ続く〉

【次ページ】 さらなる快適性を追求し、イノベーションを続ける

東海光学株式会社公式ホームページ
http://www.tokaiopt.jp/

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