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[milumo(みるも)コラム メガネのバカヤロー] [COLUMN Vol.04] メガネ君は方向音痴?

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黒渕トオル
「生涯、黒縁メガネ。」と決めこむ、兼業フリーライター。
眼鏡業界を、独自の視点で書き綴る。

黒渕トオル

 近年、海外で活躍する日本人アスリートが増えている。日本のスポーツが、各分野で世界レベルに達しつつあると言えそうだ。新聞やテレビなど、メディアからその活躍の姿を見る機会も多いが、その中に我々“メガネ戦士”の仲間・・つまり、メガネをかけてプレーしている選手は少ない。
 もしかしたら、視力が悪い選手もいるかもしれないが、おそらくコンタクトレンズを使用しているだろう。その理由はおそらく決定的で、反論の余地は無い。
 しかし、私は願いを込めて想像してしまうのだ。メガネをかけた同志が、大柄な外国人を見事なパワーでなぎ倒す姿を・・。雨風にも負けないスピードで先頭を走る姿を・・。

「メガネ君は運動音痴。」

 そんな理不尽なイメージが横行していた時代があった。いや、今も根強く残っているかもしれない。もちろん全てのメガネ君が該当するわけではないが、我々メガネ戦士にとってはまさに「バカヤロー」と叫びたくなるレッテルだ。だが、残念な事にこれにはメガネの短所が関連していた可能性がある。

 いくら上手でも、視力が悪ければ実力を発揮できない。狙ったゴールがかすんでいれば、命中率も半減してしまう。それを補おうとメガネをかけた場合、重いメガネが汗で鼻から滑り落ちそうになる為、今度は「ズレ」という、対戦相手とはまた別の敵を抱えて競技をしないといけないのだ。
 さらに、高価なメガネを壊す危険もある。サッカーのキーパーや、バレーボールのブロッカーなどは避けなければならない。柔道の組み合いや、ラクビーのスクラムなどをメガネをかけて行うのは無謀だ。

 普段メガネでスポーツする時だけコンタクトにするような、用意周到な人はほとんどないだろう。そんな面倒くさい事をするくらいなら、ずっとコンタクトをしているからだ。目が悪い人で運動する機会の多い人は、コンタクトにしていると考えるのが普通だろう。そんな中、コンタクトを使用しない人が、運動の機会を強いられた時、前述の様な“リスク”を抱え、やむを得ずプレーする。つまり、“メガネをかけたまま運動する状況”がこうして生まれるのである。

 ここまでの話で、この問題の本質が少し見えてくる。

 「メガネ君は運動音痴。」

 これは、「視力の悪い子が運動が苦手」の様な捉え方をしてしまうが、目が悪くても運動が得意な子はコンタクトをしている。メガネをかけてプレーしている子がいたとしたら、その子は運動が、そもそも好きじゃないのだ。
 つまり・・

「メガネ君は運動が嫌い。」

 ・・そういう事になる。

 本当に運動が好きで、良いプレーをしたいと思ったらメガネを外のすが、悲しい現実だろう。メガネ君がスポーツに目覚めた時、それは、コンタクトの世界へと羽ばたき“メガネ君”を卒業するきっかけの一つなのかもしれない。
 だが、皆が皆そうとは限らない。当たり前だが目が悪くなるのには理由がある。そして、メガネをかけ始めたのにも理由があるのだ。
本を沢山読みすぎて、目が悪くなったメガネ君は、外でサッカーをするくらいだったら一冊でも多く大好きな本を読みたいだろう。いわゆる「体育会系」と「インテリ系」に分類するとしたら、後者がメガネをかける可能性が高く、運動に対する興味に大きな差があるのも自然な事ではないだろうか。
 しかし、ここで大事なのは、メガネ君は運動が好きじゃないだけで、決して「下手」とは限らないという事。メガネをかけているので100%の実力が発揮されていない可能性がある。つまり、更に掘り下げるとこうだ・・

「メガネ君は運動がしにくい。」

 実に単純な話。深くも浅くもない。

要するに、ただメガネがジャマなだけで、本気で動けないだけ。
かといって好きでも無い運動を頑張る気は最初から無く、甘んじて「運動音痴」を受け入れている・・。そんな状況を、ご想像頂きたい。

 メガネ君は、自分からあえて運動をしたくはないだろう。しかし、学生時代に関しては運動は避けて通れない。なぜなら「体育」があるからだ。世間では「子供は皆、体育が大好き。」そんな勝手な思い込みが広まっている恐れがある。そんな体育の授業中に、結果が出せないメガネ君に対し“どんくさい”というレッテルが貼られてしまうのが何より悲しい。そしてこの偏見にも似たレッテルは、体育の授業中、メガネ君にビシビシと伝わってくるのである。

全然、パスくれない。

 これは“いじめ”ではないかと、冷静に考えてしまう。ドッジボールやサッカーなど、競技は様々であるが、声を出そうが、アピールしようが、とにかく味方が全然パスをくれなのだ。もちろん積極的に参加して、活躍をしたい訳では無いが、これはこれでなんとも虚しい。

実は、“メガネ”が運動音痴を連想させている。

 メガネ君に貼られたレッテルは、“どんくさい”イメージを定着させる。このイメージはチームプレーにおいて致命的だ。信頼性を大きく欠いてしまうのだ。味方に同じようにメガネ君がいたとしたら、勝敗がかかった重要なプレーを任せるのを、おそらく自分でも躊躇してしまうだろう。自身でもメガネ仲間を信用できないのだから、このレッテルを剥がすのは想像以上に難しいと言える。体育の成績評価を担任の先生が行う際、メガネ君に対するこのマイナスイメージは少なからずあるのではないだろうか。運動能力を結果で判断する以上、メガネ君の潜在能力を見抜ける教師はおそらくいない。

やはり、メガネ君は図書室がお似合いなのか。

 “上手い下手”は別として、メガネ君が必ずしも「運動音痴」でない事は確かだ。しかしこれは、メガネをかけてプレーする難しさを知っている人間が、どれ程いるかによる。落下防止の耳かけを付けたり、強力なバンドで固定し、改善を図ったとしても、メガネによる根本的なマイナスイメージを拭いきれないのが現状だ。
 世界に目を向けても、やはり状況は変わらない様に思える。プロスポーツで活躍する場合でも、プレーのしにくさに加えて、マイナスイメージを背負うリスクを考えると、やはりメガネを置いて、成功を掴むのは当然だろう。

 近年、メガネの材質は急速に進化を遂げている。チタンフレームなどの登場で大きく軽量化が進み、加えて弾性樹脂などの新素材を使用したフレームは自由な形状変化で骨格にフィットし、耐久性にも優れる。ゴムの様にしなるメガネを、誰が想像できただろうか。メガネをかけてプレーする“リスク”が無くなれば、あとは“イメージ”を大きく変える必要がある。
 メガネをかけ、世界を駆け回るトッププレーヤーが現れるのを私は待ちたい。


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